家事按分とは?個人事業主・フリーランスが知るべき基本と計算方法


個人事業主やフリーランスとして自宅で仕事をしていると、家賃や光熱費、通信費といった支出が事業用なのかプライベート用なのか、その境界が曖昧になりがちです。
「これは経費にできるのだろうか?」と悩みながら、本来認められるはずの経費を見逃し、結果的に税金を払い過ぎてしまっているケースは少なくありません。そんな悩みを解決するのが、生活費と事業費が混在する支出の中から事業で使った分だけを抜き出して経費計上する「家事按分」という会計ルールです。
この仕組みを正しく理解し実践すれば、課税所得を合法的に圧縮し、手元に残る資金を最大化できます。本記事では、家事按分の基本から具体的な計算方法、税務調査で認められるためのポイントまでを分かりやすく解説し、あなたの事業のキャッシュフロー改善をサポートします。
目次
1.家事按分の基本を理解しよう
1.1.家事按分とは その定義と目的
家事按分とは、一つの支出が事業と私生活の両方に関わる場合に、事業遂行上、直接必要であったことが明らかに区分できる金額のみを経費として計上する手続きです。
この根拠は所得税法第45条および所得税法施行令第96条にあり、国税庁の所得税基本通達45-2では、家事関連費のうち業務に必要な部分は「その主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合」に限って経費算入を認めています(nta.go.jp)。
例えば、自宅の通信費をオンライン会議やクラウドサービスの利用時間に基づいて按分し、その割合分を経費に計上します。通達上、業務使用割合が50%を超えるかどうかが一つの判断基準とされていますが、50%以下であっても客観的かつ合理的な基準で区分できる場合は、経費として認められる可能性があります。
1.2.なぜ家事按分が必要なのか 税務上のメリット
個人事業主やフリーランスの場合、家事按分を適切に行うことで課税所得を正しく抑えられるため、所得税や個人事業税の負担を軽減できます。家賃の2割、電気代の3割など実態に即した割合を経費化するだけで、年間数十万円規模の節税効果が見込めるケースも珍しくありません。また帳簿に業務割合を明記しておけば、確定申告時の計算が簡単になり、結果として事務負担も軽減されます。なお不当に高い割合を設定した場合は追徴課税や重加算税のリスクがあるため、節税と適正申告のバランスが重要です。
1.3.家事関連費と家事費の違い
家事関連費とは、事業と私生活で共用している支出のうち、業務の遂行に必要な部分を指します。代表例は家賃、電気代、携帯料金などです。一方、家事費は完全に私生活のための支出であり、事業経費にはできません。
例えば家族旅行の交通費や外食費は家事費に該当します。両者を混同すると経費の過大計上になりやすいため、領収書の段階で「全額家事費」「按分対象」などとメモして管理すると後の集計がスムーズです。国税庁通達では家事関連費の要件として「業務に直接必要」「合理的な算定」といったキーワードが明記されています。
2.家事按分の対象となる費用と具体的な計算方法
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2.1.按分の対象となる主な費用一覧
以下は家事按分の対象になりやすい主要科目です。
| 科目 | よくある根拠 | 注意点 |
| 家賃 | 使用面積比 | 物置・廊下を含めるか明示 |
| 電気代 | 消費電力×使用時間 | 季節変動を考慮 |
| ガス・水道 | 使用量×稼働時間 | 給湯・厨房機器の有無 |
| インターネット | データ使用量 | 家族共有ルータなら時間帯記録 |
| 携帯電話 | 通話明細 | 仕事用番号を分けると説明が容易 |
| 車両費 | 走行距離 | 運行日誌を保管 |
| 住宅ローン利息 | 面積比 | 元本返済部分は対象外 |
| 減価償却費 | 面積比または使用時間比 | 取得価額30万円未満なら即時償却特例も検討 |
各支出ごとに「面積」「時間」「使用量」など客観的な指標を準備すると、税務調査時の説明がスムーズになります。
2.2.按分割合の決め方と計算例 家賃 光熱費 通信費など
按分割合は「実態に即した客観的指標」を組み合わせて決定します。
- 家賃の例
住宅全体80平方メートルのうち、20平方メートルを業務スペースとして使用している場合、面積比は25%です。家賃10万円なら2万5千円を経費に計上します。
- 電気代の例
業務で使用するパソコンや照明などの消費電力が1日1,200ワット時、家庭全体の消費電力が5,000ワット時なら、業務割合は24%です。月々の電気代が1万2千円なら2,880円が経費となります。
- 携帯電話料金の例
通話明細上、業務での通話時間が全体の6割を占めるなら料金の6割を経費化できます。月額8千円の場合、4,800円が対象です。
このように「面積」「時間」「使用量」を複合して算定すると説得力が高まります。
2.3.按分割合の根拠となる証拠の残し方
按分割合を裏付ける資料として、以下のような書類やデータをそろえておくと税務調査での説明が容易になります。
- 自宅間取り図と面積計算書
- 電気・ガス・水道の検針票と消費量メモ
- インターネットの利用ログや通信量レポート
- 携帯電話の通話明細
- 車両の運行日誌(出発地・目的地・距離・目的)
- 作業時間を記録したタイムシートやカレンダー
これらの資料は、所得税法に基づき原則として7年間(白色申告の場合は5年間)の保存が義務付けられています。また、2024年1月から本格施行された改正電子帳簿保存法では、電子取引で受け取った請求書や領収書は電子データのまま保存する必要があるため注意が必要です。証拠書類はPDF化してクラウドストレージと外付けディスクなどに二重で保管しておくと、データの破損や紛失リスクを大幅に減らすことができます。

3.家事按分を行う際の注意点とよくある疑問
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3.1.按分割合は合理的な根拠に基づいて設定する
按分割合が恣意的だと判断されると、税務署は経費自体を否認する可能性があります。面積比や時間比など、第三者が追試できる計算手順を用意し、書面で残すことが必須です。特に家賃・減価償却費など金額が大きい費用ほど根拠資料の充実が求められます。
3.2.按分をしないとどうなる 税務調査のリスク
家事按分を行わず、家事関連費を全額経費として計上した場合、税務調査でその経費性が否認されるリスクが非常に高まります。国税庁が公表する調査結果においても、個人事業主の申告漏れでは家事関連費の按分誤りが頻繁に指摘される項目の一つです。
経費が否認されると、修正申告による本来の納税額に加え、ペナルティとして過少申告加算税や延滞税が課されます。もし意図的な隠蔽と判断されれば、さらに重い重加算税(最大40%)が課される可能性もあり、事業経営に深刻な影響を及ぼしかねません。例えば年間50万円の経費が否認され、所得税率が20%の場合、10万円の追徴課税に加えて各種加算税や延滞税が発生します。
3.3.確定申告での家事按分の記載方法
青色申告決算書や収支内訳書では、家事按分後の金額を各経費欄に直接記入します。別紙で按分計算表を添付すると、税務署や税理士が金額の根拠をすぐ確認できるためおすすめです。なお電子申告の場合は、ExcelやPDFで作成した按分計算表を「その他添付書類」へアップロードする方法が一般的です。
3.4.家事按分に関するよくある質問Q&A
Q 家族名義のクレジットカードで支払った通信費は按分できるか?
A 事業主本人が実際に負担していることを証明できれば按分可能です。家族内での精算書や振替伝票を残しておきましょう。
Q 消耗品をまとめ買いした場合の按分は?
A 使用量が短期間で特定できる消しゴムやコピー用紙は、月次で使用実績を集計して按分します。年間を通じて使うプリンターのトナーなどは在庫表を併用すると正確です。
Q 固定資産の減価償却費はどう扱う?
A 按分割合を乗じた金額だけを各年の減価償却費として計上します。取得価額30万円未満の資産なら、少額減価償却資産の特例により全額を取得年度で経費にできます。
Q 按分割合は途中で変えても良い?
A 事業スペースの変更や勤務形態が変わった場合は、実態に合わせて随時見直しができます。ただし、変更前後の判定根拠を明確にし、帳簿上も期間を区分して記録することが必要です。
