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金融事務とは?仕事内容から必要なスキル、キャリアパスまで徹底解説

「金融事務」と聞くと、「銀行の窓口」や「書類整理」といったイメージが強いかもしれません。

しかし、AIやRPAの導入などデジタル化が急速に進む現代の金融業界では、定型業務は自動化され、その役割は大きく変化しています。

金融事務は今や、より専門的な知識を活かして付加価値の高い業務を担う、社会の根幹を支える重要なポジションへと進化しているのです。

本記事では、銀行・証券・保険といった業態ごとの具体的な仕事内容、FPや証券外務員といった推奨資格や求められるスキル、専門職へのキャリアパス、そしてAI時代でも求められ続ける将来性まで、金融事務の全貌を網羅的に解説します。金融事務を目指す方や現役でキャリアに悩む方が、自身の市場価値を高め、安定したキャリアを築くためのヒントを提供します。

目次

1.金融事務とは?その役割と重要性

1.1.金融事務の定義と主な業務範囲

金融事務は、銀行や証券会社、保険会社といった金融機関における事務職の総称で、後方で業務を支えるバックオフィス業務が中心です。口座開設や入出金処理、取引データ入力、帳票管理、法令に基づく各種報告など、数字と書類を正確に扱う広範な業務が含まれます。特に近年はオンライン取引の拡大に伴い、各種システムの操作や顧客データの保守といったIT関連タスクも増加しています。

1.2.金融業界における金融事務の立ち位置

金融機関での事務部門は、営業部門が扱う資金や証券を安全かつ正確に管理する守護者的存在です。銀行では決済インフラの根幹を支え、証券会社では顧客資産の精算・保管を担当し、保険会社では契約情報の整合性と支払手続きを担保します。実際に、金融庁は金融機関における堅牢なオペレーショナル・リスク管理体制の重要性を繰り返し指摘しており、その中核を担うのが事務部門です。こうした業務の正確性は顧客の信頼を左右するため、金融事務は金融サービスの品質を決定づける重要ポジションと言えます。

2.金融事務の具体的な仕事内容

2.1.銀行における金融事務

  • 預金業務

口座開設、入出金、振込、税金・公共料金収納などをオペレーションシステムで処理

  • 為替業務

外国送金や外国小切手の取り扱い、為替予約管理

  • 融資関連

担保書類の確認、融資実行後の条件登録、利息計算・期日管理

  • 規制対応

犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく本人確認書類管理や、FATF(金融活動作業部会)勧告に沿った取引モニタリング。金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」では、金融機関に厳格な本人確認と継続的な顧客管理が求められており、金融事務の担当者はその最前線に立つことになります。

2.2.証券会社における金融事務

  • 取引精算

株式・債券・投資信託などの約定データを決済機関に連携

  • 口座管理

顧客属性情報の更新、NISA口座や特定口座の税務処理

  • 企業行動対応

配当金、株式分割、株主優待に伴う帳票作成

  • 内部管理

外務員登録情報の保守と当局報告

2.3.生命保険・損害保険会社における金融事務

  • 契約受付

申込書スキャン、告知書・本人確認書類のチェック

  • 保険料収納

口座振替やクレジットカード決済の消込

  • 保険金支払

事故受付データの確認、必要書類案内、支払可否判定後の送金手続き

  • 再保険処理

大型リスクを分散するための再保険契約書管理

2.4.その他の金融機関での業務

信販会社・リース会社・信用組合などでは、与信審査用資料の入力やリース資産の台帳管理、分割払債権の回収モニタリングなど、ビジネスモデルに応じた専門事務が存在します。

3.金融事務のやりがいと厳しさ

3.1.金融事務の魅力とやりがい

  • 数値がぴたりと一致したときの達成感
  • 資金決済や資産管理を通じた社会インフラへの貢献
  • 資格取得により専門性が可視化されキャリア形成につながる

3.2.金融事務の厳しさや大変な点

  • 一円の差異も許されない高い精度が常に求められる
  • 金融商品取引法や保険業法など、頻繁に改正される法令への迅速なキャッチアップ。例えば、近年の法改正では電子帳簿保存法への対応など、IT知識と法務知識の両方が不可欠な場面も増えています。
  • コンプライアンス違反は組織全体のリスクに直結するため、精神的なプレッシャーが大きい

4.金融事務に向いている人の特徴

4.1.どのような人が金融事務で活躍できるか

  • 几帳面でミスを未然に防げる
  • 責任感が強く期日を厳守できる
  • 部署横断で調整できる対人スキルを持つ

4.2.金融事務で求められる基本的な資質

  • 数字への抵抗感がない
  • Excel関数やピボットで大量データを処理できる
  • 守秘義務意識が高く機密情報を徹底管理できる

5.金融事務に必要なスキルと役立つ資格

5.1.必須となるPCスキルとコミュニケーション能力

  • Excel

VLOOKUP、IF、SUMIFSなどの応用関数、マクロ記録

  • Word

規程改定時の差分管理、稟議書作成

  • PowerPoint

内部監査報告や当局説明資料を作成

  • メールとチャット

正確かつ簡潔な文面で関係部署と調整

5.2.業務に役立つ専門知識と学習方法

  • 預金保険法や金融ADR制度などの法制度を白書で確認
  • 日本証券業協会の教材「外務員必携」最新版で商品知識を習得
  • eラーニングや社内勉強会を利用して改正法に追随

5.3.取得が推奨される資格とその概要

資格概要メリット
証券外務員一種有価証券の勧誘が可能。近年の合格率は70%前後。証券会社や銀行の投資商品担当で必須
ファイナンシャルプランニング技能士(FP)1級~3級がある国家資格。ライフプラン相談や投資信託提案で信頼性向上
簿記検定2級商業簿記と工業簿記を学習企業財務を読み解き保全判断に役立つ
金融窓口サービス技能士窓口応対の国家検定窓口業務の専門スキルを客観的に証明できる

6.金融事務の年収と給与水準

6.1.金融事務の平均年収と給与の傾向

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、「金融業,保険業」の平均賃金は他の産業と比較して高い水準にあり、専門性が給与に反映されやすい業界であることがうかがえます。

一方で、具体的な年収は企業規模や地域によって差が見られます。例えば、大手転職サイトの調査では「金融・保険」業界の初年度年収が全業種の中でトップクラスに位置づけられる傾向にある一方、地方信用金庫の窓口事務求人は350~580万円のレンジで募集されているケースもあり、企業規模による開きがあることが分かります。

6.2.経験やスキルによる年収の変化

FP(ファイナンシャルプランナー)などの資格取得で手当が加算される企業は多く、一方で証券外務員は取得が前提とされるため手当の対象外となる場合もあります。金融業界ではマネージャークラスになると年収650万円を超えることも珍しくありません。また、RPA推進やデータ分析といったDX関連スキルを持つ専門職には、700万円以上の待遇が提示されるケースも出てきています。

7.金融事務のキャリアパスと将来性

7.1.金融事務としてのキャリアアップの道筋

「担当者→リーダー→課長補佐→課長」といったキャリアパスで段階的に組織マネジメントを学ぶのは、一般的な昇進の一例です。

その後、業務企画部門へ異動し、全社的な業務プロセスの改善を目的とした新システムの導入や、内部統制強化のための規程整備などを担当することがあります。

7.2.他職種へのキャリアチェンジの可能性

  • 営業職

商品知識と顧客対応経験を活かしコンサルティング営業へ

  • 監査・リスク管理

チェック体質を活かし内部監査部門へ

7.3.AI・DX時代における金融事務の展望

SMBCグループはRPA導入により、2022年度末時点で年間600万時間弱の業務時間削減効果を上げたと発表しており、金融業界全体で定型業務の自動化は加速しています。野村総合研究所の複数のレポートや分析によると、金融機関のバックオフィス業務におけるAI活用は、単純作業の自動化に留まらず、不正検知やリスク分析といった高度な領域にも拡大していくと予測されています。これにより、人が行う業務は例外的な事象への判断や、より複雑な顧客への説明といった高付加価値な領域へとシフトしていくでしょう。事務職にもデータリテラシーとAIを使いこなすスキルが不可欠になります。

8.未経験から金融事務を目指すには

8.1.未経験者が金融事務に転職するためのポイント

  • PC基本スキルと数字管理の得意分野を履歴書で明示
  • 簿記3級やFP3級を取得して意欲を示す
  • 応募書類は誤字ゼロを徹底し正確性をアピール

8.2.派遣社員として金融事務を始めるメリット

金融事務の派遣求人では、未経験からでも挑戦しやすい案件が豊富にあります。充実した研修制度を設けている企業も多く、安心してキャリアをスタートできるでしょう。また、紹介予定派遣を活用すれば、実務経験を積みながら将来的に直接雇用への転換を目指せるチャンスも広がります。さらに、時短勤務やリモートワークといった柔軟な働き方を導入する企業が増えており、自身のライフスタイルに合わせた働き方を見つけやすいのも大きな魅力です。

8.3.転職活動でアピールすべきこと

Excelでのデータ集計・マクロ作成技術、コールセンターや販売業務で培われた顧客対応能力、そしてコンプライアンスと個人情報保護に関する深い理解は、現代の多くの企業で高く評価される専門的なスキルです。

9.まとめ 金融事務で安定したキャリアを築こう

9.1.金融事務の魅力と今後の展望

金融事務は高度な正確性と法令順守が求められる専門職であり、AI・DXによる自動化が進むほど「例外処理のプロ」としての価値が高まります。未経験でも基礎資格とPCスキルを身につけ、学び続ける姿勢を保てば、安定したキャリアと成長機会を両立できるでしょう。

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